デューデリジェンスの種類と項目、実施手法、その注意点を解説

デューデリジェンスがどのような場面で必要か、またその目的は何かまではご認識の方も多いと思います。デューデリジェンスの項目は多岐にわたり、対象の業種や企業により、その内容も異なってきます。相手企業の事業や財務状況を適正に評価することが目的ですので、基本的な項目についてしっかり押さえることが大切です。デューデリジェンスの種類・項目について解説します。

デューデリジェンスの進め方

まずはデューデリジェンスの目的とその概要から見てみましょう。

デューデリジェンスの目的と対象

立派な社屋を所有している、社長が業界では有名で人柄も良い、従業員は礼儀正しくオフィスも整理整頓が行き届いている、新商品の投入が積極的で注目されている……といった情報は、会社の外からもたらされるものです。そもそも、統合や合併の話が持ち上がる時点では、これらの基本事項に不備や不信な点があることは少ないのではないでしょうか。企業には実績とともに、隠れた事情もあることを忘れないようにしたいものです。

統合や合併によって良い結果を導くためには、一から相手企業の実態・実情を調査し、公正な視点で評価しなければなりません。デューデリジェンスの大前提は、客観的な視点で相手企業の価値を判断することです。

デューデリジェンスの種類と手順の概要・期間

売上が順調なのに、手元のキャッシュが不足した結果、黒字倒産に至る企業もあります。一方、資産内容や財務内容は申し分ないのに、本業ではライバルに後れを取ってばかりいるようなケースもあります。あるいは、法律に抵触してしまうような事実を隠している企業など、相手先企業についてはさまざまな可能性が考えられるでしょう。デューデリジェンスでは、そうした企業の実態をもれなく浮かび上がらせるための主要な調査項目として、「事業(ビジネス)」「財務」「法務」「税務」「人事」「IT」の6つがあり、これらの領域を調べて判定することが一般的です。

そして統合や合併の場合、その活動を機密にしておかなければならないことや、いち早く統合や合併の効果を得ることが重視されるので、デューデリジェンスの期間は約1~2カ月間と、決して長くはないことが多いのが実状です。

そのため、デューデリジェンスにおいては計画性が重要であることは言うまでもありません。手順としては、まず「調査範囲の決定」、「基礎資料の入手手配」、「事前分析」、「関連資料の要求」、「集積されたデータの分析」を経て、それらの結果から必要に応じて「質疑応答やインタビュー」へと進みます。そして、集大成としての「報告書の作成」を経て、「判定」へとつなげます。

この一連の流れにおいては、社内の関係者、専門家との相談や委託先の検討とその手配なども早くから求められ、6つの調査項目のうち可能なものは同時に調査・分析等を進行させなければならなくなります。

デューデリジェンスの各実施項目と内容

それでは、次に主要な6つの調査項目について解説します。

事業やビジネスに関するデューデリジェンス

たとえ現在好調でも、その対象企業の活躍する市場が将来縮小したり、ライバルに脅かされたりする可能性なども含め、企業の実績よりも市場環境とその将来性を評価します。また、統合や合併で自社と一体化した場合のビジネスメリットも見極めなければなりません。その点では、現在価値があまり評価できなくても、持っている技術や特許等の将来性に目を向けることも大切です。

財務に関するデューデリジェンス

財務に問題があると、企業経営の根本が揺らぎます。財務に関するデューデリジェンスでは、一般的な債権および負債のバランスや会計の健全性を評価し、有形・無形ともに保有資産の価値の算定などを行います。中でも重要なのはキャッシュフローの評価です。現金の不足は会社の運営に直接影響しますので、自社のキャッシュと合わせた場合の評価も含めて考えていくことになります。そして、それらの結果から導き出される収益性と、将来どの程度の収益の継続や拡大が可能かを、事業の展望も含めて算定します。

法務に関するデューデリジェンス

各種の資産等の登記や、事業に関係する事柄の許可や届け出が一通り正しく管理されているかをチェックします。事業の多くは関連する法律に従って活動しなければならないこととなっています。特定の許可がないと扱えない機器や、提供してはいけないサービスなどがあり、それらが正しく行われているかどうかを調査しなければなりません。第三者の権利の侵害の有無なども明らかにし、過去の訴訟や処罰のほか、将来のリスクを推察します。

税務に関するデューデリジェンス

経理上の不正等の有無やその危険性についても知っておく必要があります。税務処理の正しさと、将来課税対象が拡大するかなどのリスクを判定します。

人事に関するデューデリジェンス

企業は人材あっての存在とも言えます。どんな経歴の持ち主がいるか、そのスキルや育成の方法はどのようなものか、組織に社風がどれくらい影響しているかといったことも把握する必要があります。また、統合や合併後の人事異動のシミュレーションと、それに伴う退職金や各種手当等の資金見込みなども重要な論点となります。

ITに関するデューデリジェンス

ビジネスにおいてはITの活かし方がその明暗を分けると言っても過言ではありません。インターネットを経由してITサービスを利用するクラウド時代を迎え、汎用性が高まったとはいえ、まだまだ独自の環境に応じてカスタマイズされた自社システムがベースにあります。従って、統合や合併によるシステム変更などのコストも重要な観点になります。また、最近ではサイバーセキュリティーにもより一層の注意を払わなければなりません。統合・合併先の企業の脆弱なセキュリティーを突破され、大切な顧客データ等の漏えいにつながれば、大きな損害賠償責任を負いかねません。

デューデリジェンス実施上の注意点・課題

これだけ調査対象が多肢にわたり、そのうえで実施期間が限定されているとなると、効率的な活動が求められます。それらの注意点や課題について見てみましょう。

注意点と課題

デューデリジェンスは、自社や対象企業のみならず、その取引先企業との関係にも配慮しながら適切な時期に設定し、期限内に完了させなければなりません。当然、取引先はM&Aなどの活動を知らされないため、取引先との間での重要な業務の開始予定などがある場合は、その業務の開始時期やデューデリジェンスを開始するタイミングを慎重に検討しなければならなくなることもあります。

また、先ほどデューデリジェンスにおける6つの主要な調査項目を挙げましたが、業種や業態によってはさらに個々の中身を細かく見なければならないケースがあることにも留意しておきましょう。例えば、グループ会社の場合は、調査対象が広がることが予想されます。また、ビジネスやITに関する分析は専門知識のみならず、将来を予測するスキルも求められます。万全を期すためにも、デューデリジェンスの調査項目やテーマごとに外部の適切な専門機関の支援を得ることで、自社の労力を少なく抑えられるだけでなく、正確な結果を期待することができるでしょう。

専門家との連携

デューデリジェンスには全てを社内で内製する方法のほか、全て外部委託する方法、その両方を取り入れる方法という3つの選択肢がありますが、どの方法を選ぶかは慎重に検討しましょう。いざ着手してから予想以上の業務量や難度となって、調査と評価が不十分のままM&Aの判定の時期を迎えるのは避けたいものです。仮に多くを内製で行うにしても、専門家とコンタクトを進めておき、依頼するかどうかは後に判断する方法もあります。

デューデリジェンスをより全体的に知りたいという方は、以下の記事をご一読ください。

デューデリジェンスとは?概要から成功のポイントまでを解説

デューデリジェンスの不備や自信のなさから起きる弊害を排除しよう

不十分なデューデリジェンスにどれほどの弊害があるか、ご理解いただけたと思います。まずは専門家の意見を仰ぐなど、デューデリジェンスについて心づもりをしておくだけでも、安心なのではないでしょうか。変化の速い時代の経営においては、M&Aは避けて通れない課題となってきています。単に、人手が足りない、評価方法が分からないといった問題によってM&Aそのものを敬遠することが、実は会社にとって不利益になることかもしれません。足りないリソースについては外部を頼ることも検討しながら、M&Aの必要性について的確な判断ができるようにしましょう。

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