M&A用語集

あ行

アンチ・サンドバッギング条項

英語:Anti-sandbagging

アンチ・サンドバッギング(Anti-sandbagging)条項とは、M&A契約の表明保証において違反する事実を認識し、又は認識できた場合に(注)、補償請求を認めないこととする条項である。
(注)例えば、売主側の表明保証に関して、買主側が補償を求める際の文脈にした場合には、LOI前の資料開示・QA、デューデリジェンスの資料開示・QA等、最終契約締結前のプロセスで、買主が認識していた場合、という趣旨

意向表明書

英語:Letter of Intent

意向表明書とは、買い手側の企業が売り手側の企業に対して買収の意向を示すために表明する書面のこと。意向表明書には買収価格や買収後の役職員の処遇やスキーム、スケジュール等を記載するのが一般的。
「Letter of Intent」の略称で「LOI」と呼ぶこともある。
なお、基本合意書もLOIと略される場合がある。基本合意書は、当事者が当事者となる契約書形式だが、意向表明書は、買い手側が差出主となる差入書形式である。趣旨としては、買い手側からの差入書(申込書)について売り手側応諾したということで合意がなされることに成り、次のプロセス(例えばデューディリジェンス)に進むということになる。売り手側から応諾書など書面が交付されていない場合もあり、事後的に合意が書面上確認できないこともある。

か行

合併

英語:Merger

合併とは複数の会社が契約によって一つの法人格になることをいう。
合併には吸収合併と新設合併の2種類があり、吸収合併は一方の法人格が存続して他方の法人格は解散し、解散する会社の資産の全てを存続会社に承継させる手法をいい、新設合併とは全ての法人格が精算手続きをせずに解散して新設会社を設立し、全ての会社の資産を新設した会社に承継させる手法のこと。
新設合併は手続きが複雑でコストが多大にかかるため、多くの場合は吸収合併が選択されている。

完全親会社

英語:Wholly Owning Parent Company

完全親会社とは、他の株式会社の発行済み株式を100%保有していることをいう。
全株式を保有されている完全子会社の経営権は完全親会社に支配される。

完全子会社

英語:Wholly Owned Subsidiary

完全子会社とは、他の株式会社に自社の発行済み株式を100%保有されていることをいう。
株式会社以外の有限会社や個人等が株式を保有する場合、完全子会社とはいわない。

会社更生法

英語:Corporate Reorganization Act

会社更生法とは、現状経営が破綻しているが、再建の可能性がある企業を清算せずに更生させることを目的とした法律のこと。裁判所が選任した管財人が監督となり更生計画を立て、対象会社を立て直す。
民事再生法とは異なり、対象は株式会社のみで、原則経営陣の交替が必要となる。一般的に時間やコスト面から会社再生法を適用するのは大企業が想定されている。

会社分割

英語:Company Split

会社分割とは、会社の特定の事業に関して有する権利や義務、資産などの全部または一部を複数の法人格に分割し新設した会社に承継させたり、他の会社に承継させるM&Aの手法のひとつ。
分割した権利義務資産を既存の会社に承継させることを「吸収分割」、新たに設立した会社に承継させることを「新設分割」という。
特定事業を切り離して承継するため事業譲渡と類似しているが、事業譲渡は資産や負債、契約上の地位などの個々の資産の譲渡・承継等(特定承継)であるが、会社分割は会社分割の法務手続を踏むことで包括承継できるのが特徴である。

株式価値

英語:Equity Value

M&Aにおける株式価値とは、対象となる企業の株主に帰属する部分のこと。
一般に、全発行済み株式数に応じた金額を意味する。EV(Enterprise Value,企業価値(事業価値)との関係では、EV+非事業性資産-有利子負債=株式価値となる。

株式譲渡

英語:Stock Purchase

株式譲渡とは、対象企業の株式を譲渡することで経営権を移転する手法のこと。
経営権を移転するには過半数以上の株式の譲渡が必要であり、定款変更、株式交換等再編など特別決議を可決できる権利を手に入れるには、支配権を移転するには2/3以上必要。
非上場の中堅・中小企業が売り手になる場合のM&Aでは株式譲渡や事業譲渡が多く選択されています。

企業価値(事業価値)

英語:Enterprise Value

企業価値(事業価値)とは、企業(事業)の経済的価値のこと。
「Enterprise Value」の略称で「EV」と呼ぶこともある。
上場会社の企業価値(事業価値)は、株式価値(100%)+有利子負債-現預金などで算出する。
企業価値評価上において株式価値と企業価値(事業価値)の関係は、企業価値(事業価値)+非事業性資産-有利子負債=株式価値などと整理される。

基本合意書

英語:Memorandum of Understanding 、Letter of Intent

基本合意書とは取引での当事者間で最終契約締結前の交渉段階で様々な基本的な条件について合意書を交わすもの。一般的にデューデリジェンスの前に締結する。
基本合意書のことをMOU(Memorandum of Understanding)、LOI(Letter of Intent)という。

秘密保持契約書

英語:Non Disclosure Agreement

秘密保持契約書とは、M&Aを進める中でアドバイザーや買い手候補先企業等に開示した情報を外部に漏えいしないことを約束するための契約。
M&Aの検討自体を秘密にする場合が多く、検討段階の早期に秘密保持契約を締結する事が多い。
NDA(Non Disclosure Agreement)やCA(Confidentiality Agreement)と呼ぶことがある。

吸収合併

英語:Absorption-type Merger

吸収合併とは合併の種類のひとつで、一方の法人格が存続し、他方の法人格は解散し、資産や権利義務の全てを存続会社に承継させる手法。
吸収合併のほかに合併する両社を解散させて新設会社に全てを承継させる新設合併もありますが、実務上吸収合併が圧倒的に多く、新設合併の件数は少ない。

吸収分割

英語:absorption-type split

吸収分割とは、会社の事業の一部または全部を既存の他社に承継するM&Aの手法で会社分割の形態のひとつ。
承継先が既存の他社ではなく、新しく設立した会社に承継させることを「新設分割」という。

業務提携

英語:business alliance

業務提携とは、複数の企業が資本の移動を伴わずに実行する事業の提携のことでM&Aの手法のひとつ。双方の関係をより強固なものにする目的で資本の移動を伴い資本業務提携とする場合もある。

さ行

サンドバッギング条項

英語:Sandbagging

サンドバッギング(Sandbagging)条項とは、M&A契約の表明保証において 違反する事実の認識やその可能性の有無にかかわらず(注)、補償請求を認める条項である。
プロ・サンドバッギングともいう。
(注)例えば、売主側の表明保証に関して、買主側が補償を求める際の文脈で換言すると、LOI前の資料開示・QA、デューデリジェンスの資料開示・QA等、最終契約締結前のプロセスで、買主が認識し、又は認識できたか否かにかかわらず、という趣旨

事業譲渡・事業譲受

英語:Asset Purchase

事業譲渡・事業譲受とはM&Aの手法の一つで、複数の事業のうち全てもしくは特定の事業を切り離して第三者に譲渡すること又は譲り受けること。
買い手の立場からM&A手法を整理すると、株式の取得と大別して事業の取得があり、後者のうち組織再編によらないものと位置付けられます。
具体的には、事業に関連する資産、負債、人員、取引先、契約などが譲渡対象となります。また、対象となる事業が独立で切り離せることはまれで、管理部門の業務・サービス(経理・システム等)に関する費用、他の事業を兼務している従業員の業務・費用の振り分けなど固有の論点が発生し、事業価値評価・分析、手続に影響します。
買い手側にとっては必要な店舗や事業などを切り取って譲受けすることができたり、会社に紐つく税務リスクの承継を回避できるなどメリットがある一方で、権利や義務などの引継手続が個別に必要になります。

資本提携

英語:capital alliance

資本提携とは、企業同士が資本を持ち合う、他の企業からの資本を受け入れる、他の企業に資本を投入することをいう。資本提携は当事者間でより強固な関係性を築くことを目的に実行されることが多く、経営や財務でのシナジー効果を発揮しやすくなります。

ショートリスト

英語:Short List

ショートリストとは、ロングリストを絞り込んだリストのことをいい、具体的に打診する買い手候補先リストのこと。

新設合併

英語:consolidation-type merger

新設合併とは合併の種類のひとつで、複数の会社が清算手続きをせずに解散し、対象となる会社の全ての資産を設立した新設会社に承継させること。
新設合併には、吸収合併について手法の実質的な採用理由や当事会社の実態とは別に、解散した会社が劣後的な立場で、承継した会社が優越的な立場というような時々持たれる短絡的なイメージを軽減するなどのメリットもある一方で手続き等が多く手間がかかり、コストも余計にかかります。また、対価として受け取れるのは基本的に現金ではなく新設会社の株式や社債等になるので、経営者が引退を目的として合併をする場合はメリットがなくなります。そのような現状から吸収合併の方が多く選択されています。

新設分割

英語:incorporation-type company split

新設分割とは、会社の事業の一部または全部を新たに設立した会社に承継するM&Aの手法で会社分割の形態のひとつ。
承継先が新設した会社ではなく、既存の他社に承継させることを「吸収分割」という。

親族内承継

英語:Interfamilial Succession

親族内承継とは、ご子息やご息女など、自身の親族、血縁者を後継者として事業を承継すること。親族や血縁者以外に自社の役員や従業員に事業を承継することを親族外承継、どちらにも当てはまらない第三者へ承継することをM&Aという。
近年は後継者不足や職業選択の自由化の影響で親族内承継の件数は減少し第三者へのM&Aが増加の傾向にある。

親族外承継

英語:Succession to unrelated person

親族外承継とは、親族や血縁者ではなく、自社の役員や従業員に事業を承継すること。
ご自身のご子息やご息女が不在で親族内承継を実施できず、自社内に経営者の資質をもった後継者候補となる人物がいる場合に親族外承継を実施する場合がある。
しかし親族外承継を実施するには、経営者の資質があるだけではなく、株式を買い取る資金力や担保力、将来事業が悪化した場合の覚悟が必要など、ハードルが高いため、親族に後継者候補がいない場合は第三者へのM&Aを実行されることが多い。

た行

デューデリジェンス

英語:Due Diligence

デューデリジェンスとは、M&Aを実行する前に対象会社について詳細に調査すること。DDともいう。
公認会計士や監査法人等が対象会社の法務面や財務面の状況や問題点、リスクなどを分析し、対象会社の実態を詳細に把握するために行う精密検査です。
デューデリジェンスにはビジネスDD、財務DD、税務DD、法務DD、人事DD、環境DD、ITDDなど様々な種類があり、進行中のM&A取引の状況を鑑みて、必要なDDを実施します。

独占交渉権

英語:Exclusive Right

独占交渉権とは、買い手側の企業は売り手側企業に対し他の買い手候補企業を排除して一定期間独占的に交渉できる権利のこと。基本合意書の内容に含まれることが多い。一般的に買い手側は、基本合意締結後、会計士・弁護士など専門家を起用し費用を投じて調査をするため、不用意に乗り換えられることを懸念し独占交渉権を得ることを強く望み、期間も相当程度長期間である。一般的に売り手側にとっては、独占交渉権を付与しない、もしくは短期間であることが交渉力を維持するためにも望ましい。

は行

表明保証

英語:rep and warranty

表明保証とは、譲渡企業が譲受企業に対し、最終契約の締結日や譲渡日等において、財務や税務、法務などに関する当該事項が真実かつ正確であることを相手方に対して表明し、その内容を保証すること。
これは、M&Aを実施する際にはデューデリジェンスを行うが、対象会社に対する調査や事実の全てを把握することは困難であり、問題点を発見できない場合もあるため、対象会社に掲示した情報が真実であることを表明及び保証させ、想定外の事象が発生した際のリスク負担や、掲示された情報が事実と異なる場合に発生した損害に対して補償を取り決めておくために行います。
表明保証違反をした場合は損害賠償請求やM&A契約の解除につながる事もあります。

フィナンシャルアドバイザー

英語:Financial Advisor

M&Aにおけるフィナンシャルアドバイザー(FA)とは、M&Aにおける助言業務を行うアドバイザーのことをいう。買い手候補企業の選定やM&Aプロセスの設計、バリュエーション、財務・税務・法務等の助言など業務は多岐にわたる。
M&Aにおけるアドバイザーは、フィナンシャルアドバイザー、M&Aアドバイザー、M&Aコンサルタントなど呼称は様々だが一般に報酬の大半が成功報酬で構成されており、相手方(売手にとっては買手、買手にとっては売手)との縁を取り持つという点においては共通している。一方で、相手方と同様の契約し、相手方からも成功報酬を得る“仲介”は“案件の成約のみ”を目的とする。そのため、買い手候補の模索、条件交渉の各場面において、売り手の利益に反する傾向も少なくないため、一定の条件交渉を望む場合は、避けることが肝要である。

簿外債務

英語:Off-the-book Liabilities

簿外債務とは、貸借対照表上に記載されていない債務のことをいう。
中小企業の多くは税務会計で決算を行っているため、賞与引当金や退職給付引当金などが簿外債務にあたる。
買い手企業にとって簿外債務の存在はリスクであり、基本合意前のヒアリング、基本合意後のデューデリジェンスによる調査の対象となる。また、株式譲渡契約においても、買い手企業が売り手企業に「簿外債務が不存在であること」を表明保証させることは一般的である。売り手企業としては、案件実行前(案件後半)で確認されると、大幅な条件の変動や案件の中止、案件実行後であれば紛争等トラブルとなる可能性もあるため、早い段階で売り手企業自身のアドバイザーを通して買い手企業サイドに伝えるなど対処することが望ましい。

や行

優先交渉権

英語:First Negotiation Right

優先交渉権とは、特定の買い手企業が他社より優先して交渉できる権利のこと。
買い手候補企業が複数社いる場合に買い手企業の買収条件等を検討し、1社または少数社に対し売り手企業が与えるもの。

ら行

リテイナーフィー

英語:Retainer Fee

リテイナーフィーとは、契約期間中にM&Aアドバイザーに支払う定額報酬のことをいう。
契約期間中の相手先企業への訪問や調査などの業務に対し、成功報酬とは別に支払うもの。
定額報酬ではなく着手金のみをリテイナーフィーと呼ぶこともある。

ロングリスト

英語:Long List

ロングリストとは、対象会社の希望を踏まえて一定の基準で選定した買い手候補先をリストにしたもの。
ロングリストを基に対象会社とアドバイザー間で意向を確認したり優先順位を決め、さらに絞り込んだリストをショートリストといい、具体的に買い手候補へ打診していく流れとなる。

英数字

CA

英語:Confidentiality Agreement

CAとは「Confidentiality Agreement」の略で「秘密保持契約書」のこと。
NDA(Non Disclosure Agreement)ともいう。

LBO

英語:Leveraged buy out

LBOとは「Leveraged buy out」の略でM&Aの手法のひとつ。買収予定企業の資産やキャッシュフローといった買収する企業の将来の収益を担保に資金の一部を借入れて買収を実行すること。
LBOを実行する際はSPC(特別目的会社)を設立し資金調達を行い、資金が用意できた段階で買収を実行し、SPCと対象企業を合併させる方法が多く取られている。

LOI

英語:Letter of Intent

LOIとは「Letter of Intent」の略で、「意向表明書」、「趣意書」、「基本合意書」のこと。
「基本合意書」については、LOIのほか、「Memorandum of Understanding(略称 MOU)」と訳されることもある。

MBO

英語:Management buy out

MBOとは「Management buy out」の略で、経営陣が自社の株式の一部または全部を買収する手法のこと。
買収する経営陣の資金が不足している場合、LBOと組み合わせてMBOを実行するケースも多い。また、買収後も経営を継続することを前提としている。

M&A

英語:Mergers & Acquisitions

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で「合併・買収」のこと。企業や経営権の買収や譲渡以外にも、業務提携なども含めた広い意味での企業間提携の総称。
第三者によるM&Aが後継者不足による事業承継の新しい解決策として近年注目を集めている。

NDA

英語:Non Disclosure Agreement

NDAとは「Non Disclosure Agreement」の略で「秘密保持契約」のこと。
CA(Confidentiality Agreement)ともいう。

PMI

英語:Post Merger Integration

PMIとは「Post Merger Integration」の略でM&A実行後に行う両社の統合作業のこと。M&Aでは、文化等が異なる組織が、1法人又はグループとなるため、シナジーを実現するためには、自社内・グループにおける戦略的な取り組みが必要となる。例えば、100日プランといわれる統合計画を策定し実行する場合があるほか、統合直後からの円滑な統合計画推進のため、M&A実行前からPMIの準備を行うこともある。M&Aに関する一連の流れの中でも非常に重要なプロセスであり、M&Aを実行した結果が良好になるかはPMI次第といわれる。

ROE

英語:Return on Equity

ROEとは、「Return on Equity」の略で自己資本利益率のこと。
株主が投資した資本に対してどのくらい利益を出しているかを示す指標。
ROEが10%以上の会社は優良企業と判断されることが多いが、業種によって平均値は異なるため注意が必要。

計算式
ROE(%)=当期純利益÷自己資本(純資産-新株予約権-少数株主持ち分)×100

TOB

英語:Takeover Bid

TOBとは「Takeover Bid」の略で株式公開買付のこと。経営権の取得を目的として不特定多数の株主から株式市場外で直接買い付けを実施することで、M&Aの手法のひとつ。
実施するには事前に買い付け期間、株数(上限下限)、価格を公表する必要があり、対象企業が買付に合意している場合は友好的TOB、合意していない場合は敵対的TOBと二種類に分かれます。
買い付け予定株数の下限を設け、それに満たない場合は、取得しないことも可能です。また、全株式のうちの2/3以上を上限に設定することはできず、2/3以上取得する場合は100%買い付けしなければなりません(全部買付け義務)。