他社の譲受
M&Aによって「時間を買う」という選択肢
M&Aを譲受企業側の視点で見た場合、最大のメリットは、一言で言って「時間を買う」ことだと言われています。つまり、設備投資をして、人材を育成し、その設備で生産性を上げて収益化にたどり着く代わりに、既存の設備と人員が整った企業を譲受し、すぐにその利益を享受することができる、ということです。
もちろん、M&Aにはそれ以外にも様々なメリットがあります。ただ、これらのほとんどは、本質的には「時間を買う」ことと同じと言えるかもしれません。
- 事業領域拡大
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- - 隣接業界へ進出することで、自社バリューチェーンを拡大
- シェア獲得
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- - 同業譲受により、マーケットシェアを向上させ、「規模の経済」発揮を狙う
- 販路獲得
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- - 自社ではリーチが困難な年齢層や業界、エリアへの販路を獲得
- 人材獲得
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- - 事業運営にノウハウを持つ人材を獲得することで事業成長加速を期待
- - 専門家や資格保有者など企業に属する人材を求める
- - また、譲受先に優秀な経営人材がいれば自社経営の中枢を担っていただくことも
- 技術獲得
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- - 自社が有しない先進技術、特殊技術の獲得
- リスク分散の視点
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- - 取引先一極集中などを分散させることでリスク解消
何のための企業譲受かをはっきりさせる
企業の譲受を考える場合、先に「どのメリットを狙おう」「どの企業を譲受しよう」と考えるのは、本来のあり方とは言えません。そうではなく、「今の会社の将来像」が先にあり、現在地との延長線とのギャップに対する解決策として、「こういう企業を譲受できれば、うまく行くのではないだろうか」と考え、具体的な企業を探す、というのが正しい流れだと考えます。
買い手が気にすべき4つのポイント
- 経営計画、方針と適合していますか?
- まずは、目的を明確化し、経営計画、方針との整合性を確認することが重要です。また、会社の発展や従業員のことも重視しながら総合的に検討していく必要があります。
- 交渉条件に固執しすぎていませんか?
- 交渉条件に固執せず、売り手企業に心を配り、M&Aを望む本当の理由(従業員の雇用維持、引退後の資産形成、引退後計画)を大事にすることが必要です。
- 社風、企業文化を受け入れる姿勢はありますか?
- 社風や企業文化が合うかどうかが、譲受後の運営が円滑に進むか否かに与える影響は少なくないです。それゆえ、社風、企業文化に親和性がある相手と取り組めるならそれに越したことはありません。
一方で、社風、企業文化は、多種多様でまったく同じということはありません。
- アフターM&Aを考えていますか?
- PMI(Post Merger Integration)を通じてM&A後にシナジーをきちんと実現させ企業価値を向上させることがM&Aの最大の目的です。案件検討段階においては、PMI を常に意識したプロセス設計が肝心です。