M&Aトピックス
後継者問題の現状と事業承継をめぐる環境変化
はじめに
経済の変化とともに経営者の年齢は高齢化の一途をたどり会社の将来を考えたときに避けられない一大イベントとして事業承継があります。
30年~40年前の経済成長期に会社を設立した企業の多くが今後10年間で事業承継を目前に控えており、2015年~2020年までに70歳に到達する経営者は約30.6万人にのぼり、75歳に達する経営者は約6.3万人になるともいわれています。日本企業の中小企業は99.7%を占め、経営者の高齢化が進むなかで後継者が不在の企業が多く、経済産業省と中小企業庁が2017年に出した試算によると「現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる」可能性があり、大変深刻な問題となっています。
60代経営者の約2社に1社が後継者不在
2016年時点で後継者が不在の中小企業は全体のうち3分の2となっており、60歳以上は48.7%と約半数の企業が後継者不在というデータが出ています。後継者を育成する期間は5年~10年程度は必要であり、現時点で後継者候補が不在の場合は早急に対策を講じる必要があります。
出典:帝国データバンク 2017/11/28「後継者問題に関する企業の実態調査」
事業承継と言えばかつてはご子息やご息女への親族内承継が主流でした。しかし現在親族内承継の件数は年々減少し、第三者へのM&Aが増加してきているのです。その背景は継がせるご子息やご息女がいない、候補者はすでに他の会社に勤めている、後継者候補はいるが自分と同じ苦労を味あわせたくないなど理由はさまざまです。今後10年は経営者が事業承継に最適な年齢のピークを迎えるため、後継者が不在の場合でも次の世代に事業を承継していく必要があります。後継者不足や高齢化が進むなか、年々引退年齢は上昇傾向にあります。
出典:日本制作金融公庫研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」
後継者問題を先送りにし、結果的に廃業という道しか選べなくなってしまう企業も数多くあります。上記のグラフにもあるように、後継者難により廃業を選択する予定の企業は約28.5%にものぼります。会社を廃業してしまうと従業員や取引先にも負担がかかるので、廃業はあくまでも最後の手段と考え、早い段階から事業承継について検討をはじめましょう。