経営者の「アーリーリタイア」に必要な準備とは?成功のポイントは?

経営者の「アーリーリタイア」に必要な準備とは?成功のポイントは?

アーリーリタイアとは、まだ働き続けられる年齢であるにも関わらず、これからの人生で必要となる生活費を確保し、自らの意思で会社を早期に退職することです。名前の知れた事業家や、金融・商品・不動産などの運用で莫大(ばくだい)な資産を手に入れた人でなければ、アーリーリタイアなど夢のまた夢、と考えてしまうかもしれません。しかし欧米では、経済的に自立しながら早期に退職することを表す「FIRE」を目指す動きが一種の社会現象になっています。「FIRE」の動きに後押しされて、役職経験の長い会社員や小規模な企業の経営者でも、アーリーリタイアを実現する人がでてきています。アーリーリタイアに必要な準備と、成功のポイントを紹介します。

アーリーリタイアとは

日本人にはなじみのない言葉かもしれませんが、アーリーリタイアの意味は、文字どおり「Early(早期の)」「 Retirement(退職)」です。最近の動きから、その内容を具体的に見てみましょう。

欧米でのアーリーリタイア

アーリーリタイアの最近のひとつの傾向として、「FIRE(Financial Independence, Retire Early)ムーブメント」が注目されています。その結果、アーリーリタイアが、より身近で、実現可能なものとして認識されるようになりました。FIREとは、就業や経営とはかかわりがなくとも経済的に独立し、会社や仕事にしばられずに時間を使い、人生を楽しむライフスタイルを目指す動きです。個人は企業や社会とは別であり、もっと自由な存在でいられることを尊重する、欧米的な考え方が根底にあります。早期退職と聞くと、邸宅でゆったり趣味や娯楽の時間を過ごすイメージがあります。しかしFIREは、自由であることが第一で、裕福かどうかは問いません。

日本では、定年まで、または定年後も働き続けることが、美徳とされる考え方の方も多くいらっしゃいますが、再度自分自身のライフスタイルを考えてみるのも人生のひとつの選択肢かもしれません。

何歳でのリタイアがアーリーか?

リタイアという言葉には、定年退職や老齢から経営を後進に譲るというイメージがあります。しかし、20代、30代でも事業や資産運用で大きく成功すれば、アーリーリタイアは可能です。実際に、多くの自由になりたい若い世代もFIREを実践しています。つまり、条件さえ整えば、だれでも、どの年代でも、早期退職は可能なのです。会社員であっても若いうちから役職につき、例えば早い時期から資産運用を堅実に行なうことで、定年を待たずに退職し、有意義で充実した50代や60代を過ごすことができます。

経営者にチャンス

資産運用で膨大(ぼうだい)な資金を得ることは、実際にはそう簡単にはできません。しかし、事業の運営を手堅く行った結果、経営者としてある程度の資産を築くことができた場合は、アーリーリタイアは夢ではありません。つまり、経営者の多くに、アーリーリタイアの可能性があるといえるでしょう。

経営者のアーリーリタイアのすすめ

事業や企業の買収により、事業規模を拡大したり経営を立てなおしたりする手法であるM&Aも、その結果の波及として、アーリーリタイアにつながる可能性があります。旧経営者側は、M&Aで得た資金を生涯自由に過ごすための生活資金に充てることができ、企業側は、新経営者のもとでより成長する機会を得ることができます。しかし、日本人は周囲の目を気にしやすく、早期退職に抵抗を感じる人も少なくないでしょう。そこで、アーリーリタイアの意義と価値について考えてみましょう。

アーリーリタイアという発想がない原因は?

日本人の職業に関する価値観では、「定年まで働き続ける」ことが当たり前とされています。また、社会からどのように自分が見られているか、という「他人の目」を気にします。企業や団体の従業員だけではなく、経営者も「第一線に立ち続けること」こそが使命であると感じる人も少なくないでしょう。アーリーリタイア後の生活というと、経営を後継者に任せ、余暇や趣味に専念するという姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、リタイア後の第二の人生にも、社会活動の第一線で活躍するという選択肢もあります。例えば、これまでの経験や技術、資金力を生かして、ベンチャー向けの投資家として活動したり、経営の相談相手として若い世代の経営者を指導したりすることもできます。リタイア前の経営者時代以上に多くの人の力になれれば、社会的な貢献もよりできることでしょう。

アーリーリタイアのメリットとデメリット

ここまでで、アーリーリタイアに対するイメージが、だいぶ変わってきたのではないでしょうか。でも何かリスクはないのだろうか、と心配する人もいるかもしれません。アーリーリタイアをするメリットとデメリットについて整理してみましょう。

アーリーリタイアをすると、次のようなメリットがあります。

  • 個人の自由な時間が増え、新しい生き方を選択できる。
  • 昔の夢の実現や、やりたかった趣味の時間が増える。
  • 会社にとっては、早期の代替わりによる新しい発想や行動が経営を切り替える機会となる。
  • 社会貢献活動や会社に限定されない後進の指導などを通して、経験や技術を広く生かせる。
  • 新たな事業や活動内容を考案し、準備する時間にあてられる。

では、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

  • これまでの生活を見なおし、手元の資金・資産とのバランスのとれた生活スタイルに変える必要がある。
  • 社宅、社用車といった会社の資産を個人資産から明確に分離し、生活を再設計する必要がある。
  • 次の経営者への引継ぎが滞ると、社員や取引先へ悪影響が出るおそれがある。

重要なのは、経営から退くことを前提に自分のライフスタイルを見なおすことです。また、残される従業員のことも考え、後継者にしっかりと引継ぎをすることも必要です。リタイア後に起業のチャンスがないというわけではありません。ゆったりと時間を過ごすうちに新しいアイデアが湧けば、再び事業家となることも可能なのです。

アーリーリタイアの実際

アーリーリタイアに関する懸念事項と、その解決・対処方法について見てみましょう。

アーリーリタイア成功のポイントは、生涯生活の資金源の確保

アーリーリタイアを成功させる最も重要かつ最大の課題は、生涯の生活資金が確保できるかどうかです。何もしなくても本人や家族が十分に生活できるだけの余裕資金があれば別ですが、そうでない場合は、資金計画を万全にしておく必要があります。

生涯資金の計画は、リタイアする年齢から残りの人生の年数を換算し、生活費の総額を計算することからはじまります。

  • 年間に必要とされる生活費の総額×リタイア後の生涯期間の年数=アーリーリタイア必要資金

この計算式により算出した必要資金額は、手元の資金額を超えていることが多いかもしれません。経営者報酬を基準に生活費を見積もり、従業員や業界関係者との懇親会費用も計算に入れていると、資金が不足する可能性があります。そのため、無理のない範囲でライフスタイルを見なおし、無駄な出費を極力抑えることが重要です。

また、どんなに気をつけていても避けられないのは、不慮の事故や病気です。それらに備え、家族や家財も含めて、生命保険や損害保険の見なおしをしておくことも大切です。思わぬ出費は、生涯の資金計画を根底から変えてしまうこともありえます。健康のために食事や運動に気を配り、リスク回避のために保険の見なおしをしましょう。

経営者は、リタイア前から資産のプランを

資金計画を立てる際は、現在の役員報酬から今後の貯蓄額を予想し、個人資産と会社資産との関係を洗いだします。また、現在の個人貯蓄や資産を把握し、あらたに調達すべき生活必需品の費用といった出費も計算します。

さらに、リタイア時の退職金とその税金額を計算します。とくに税金対策は重要で、将来のリタイアに合わせ、対策を練って準備をしておかないと、退職後の資金源を税金で目減りさせてしまいかねません。

役員退職金制度のポイントと節税対策についてはこちらをご覧ください。

いますぐのアーリーリタイアは無理でも、これらの計算結果から現状の生活費を見なおし、不動産をはじめ個人資産のあり方を再検討して税金対策を立てておけば、数年後にアーリーリタイアが実現可能になることもありえます。

安心して任せられる後継者の育成と経営課題の整理・解決

アーリーリタイアする際、退職する会社の今後の経営が、大きな心配ごととなるかもしれません。重要なのは、信頼できる後継者を選出することと、安心して引きわたせるように、現時点で把握している経営上の課題をリタイア前に解消しておくことです。

事業承継のための準備についてはこちらをご覧ください。

会社に残る役員や従業員のプラスになることを考え、M&Aで事業や子会社、または会社全体を別の有力企業に売却、あるいは買収して事業を盤石にし、よりよい経営環境にしたあとでリタイアするのがベストです。M&Aが、現在の経営上の課題を解決し、アーリーリタイアを実現するひとつの有効な方法になります。

例えば、経営の多角化をはかり複数の事業を手がけてきた結果、有力ではあるものの、いまひとつ十分に実力を発揮できていない子会社があるとします。親会社の本業とは異業種の関係であることも多く、そのような場合は、適切な業種の企業を探して売却することも検討できます。新しい親会社のもとで活躍できるのならば、売る会社、買う会社、売られる子会社のすべてでウイン・ウインの関係を築けるでしょう。

子会社売却の概要と成功のポイントはこちらをご覧ください。

後継者と資産運用をリタイアプランから逆算して検討

これまでアーリーリタイアなど一度も考えたことがないという経営者も、仮にアーリーリタイアするとしたら何歳ごろにしたいか、もし実現できたら、どんな人生を送りたいかなどを想像してみるのはいかがでしょうか。また、アーリーリタイア後の生涯資金について、希望するリタイア時期の年齢から逆算して考えてみると、意外と実現可能な範囲であることに気づくかもしれません。

実際には、アーリーリタイアの条件は、経営者とその会社の経営状態によって異なります。信頼できる、M&Aに強いコンサルティング会社に相談し、経営課題の現状を見すえながら、アーリーリタイアやM&Aの準備を進めるとまちがいがないでしょう。

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